教員紹介
専任講師
八桁 由布樹
YAGETA Yuki
Profile
児童教育コース専任講師。東京学芸大学大学院連合学校教育学研究科修了。博士(教育学)。日本人学校学校採用教員(小学校)、米国ワシントン大学(University of Washington)客員学生、中等教育学校および大学における非常勤講師、外国につながる子どもの学習支援員等を経て2023年4月より現職。専門は音楽(科)教育。特に多文化地域における音楽科教育のあり方に関心を持つ。トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラム6期生。
学生へメッセージ
みなさんは「音楽」は好きですか?また、学校の「音楽」の授業は好きでしたか?ここで考えていただきたいのは、この問いにおける「音楽」に対して、みなさんがどのようなものを思い浮かべたかということです。
私は学生の時、「♪せっせっせ〜のよいよいよい」等のわらべうたも「音楽」であることを知り、非常に驚きました。また、海外の小学校における音楽発表会で子どもたちがゴッホの絵を見て感じたことを即興演奏で表現するのを目の当たりにして、こんな音楽発表会もアリなのかとびっくりしました。このような目から鱗経験を通して、私は自身の音楽や音楽教育に対する凝り固まった考え方に気づきました。
音楽教育で大切にされている考え方の1つに、全ての人のいかなる音楽表現も等しく価値があるというものがありますが、みなさんはこれをどう受け止めますか。これまで出会ってきた方の中には、「音楽は苦手なんです〜」と言いつつカラオケは大好きという方もいました。音楽への苦手意識は、「音楽(の授業)とはこうあるべき」という誤解を含めた「当たり前」によって、つくられてきたのかもしれません。
みなさんには、ぜひ「当たり前」を問い直す、批判的思考を高めてほしいと考えています。批判的思考というのは何でも否定的に捉えることではありません。他国との比較や、先人によって構築されてきた理論、友人の意見等から新しい視点や知識を得て、多角的に物事を再考することです。「当たり前」を解きほぐす過程において、違いや多様性が皆の内にあることに気づき、それが互いに自然と認められる社会になれば、全ての人々にとって生きやすい社会に近づくことができると思います。
私の授業では、群馬の音楽、沖縄の音楽等を含めた様々な地域、ポピュラーを含めた様々なジャンルの音楽文化に親しみ、それを大切にしてきた方々の想いに触れる機会を提供します。「当たり前」について一緒に考えていきましょう。
研究内容について
教室内の多文化化に応じた音楽科教育のあり方を探求しています。私がこのようなテーマに関心を持ったのは、音楽科教員や学級担任をしていた際、外国につながる子どもたちの良さや可能性を私は潰してしまったのではないか、彼らの「本当の気持ち」や背景を果たして理解できていたか等、多くの後悔があったからでした。
外国につながる子どもとは、外国籍の子どもだけでなく、国際結婚家庭の子どもも含む概念です。教育の方向性を示している学習指導要領では、音楽科等において、外国につながる子どもたちの特性を活かす活動が推奨されています。では、彼らの特性を生かす音楽的活動とは、具体的にどのような実践が想定できるでしょうか?
例えば、群馬のように教室内の中の国際化が進んでいる地域では、日本語(国際)学級で学ぶ子どもたちの音楽文化を取り上げて学ぶ音楽活動も行われています。この活動の良い点として、外国につながる子どもたちにとって、ルーツにつながる文化への肯定的意識を高めることができること、さらに周りの子どもたちにとっては、国際的な視野や、多様性を尊重できる姿勢を培う可能性を挙げることができます。
しかしながら、外国につながる子どもたちだった方々への聞き取り調査からは、彼らの民族的ルーツに着目した音楽活動によって、例えばクラスメイトに知られたくない民族的背景を暴露してしまうなど、彼らの教室での立場を危うくする可能性があることもわかってきました。
一口に外国につながる子どもたちと言っても、彼らの背景は非常に多様です。ゆえに、全ての子どもが安心して楽しめる音楽の授業を実現するためには、教員が子どもたちの音楽文化だけでなく、彼らの立場や思いを理解する必要があります。その機会を、先生方や教職を目指す学生の方へ提供するための橋渡しができればと思っています。ぜひ群馬の教育に携わる・携わりたい皆様のお話をおうかがいさせてください。
担当科目
基礎演習 I・II / 課題演習 I・II / 教育実習事前事後指導(初等) / 教育実習(初等) / 初等音楽概説 / 音楽と共生 / こどもと音楽 / 教職実践演習 / 学校フィールド学習AB