教員養成に対する理念及び認定課程設置の趣旨等
1888年に設立され群馬県において最も歴史のある私学である共愛学園は、聖書の言葉である「共愛=共生」を理念にキリスト教主義を柱として教育活動を展開してきた。1999年には共愛学園女子短期大学を改組し共愛学園前橋国際大学を開学させ、国際社会学部を設置したが、その教育の目的は「国際社会のあり方について見識と洞察力を持ち、国際化に伴う地域社会の諸課題に対処できる人材の養成」とし、地域の人材育成を主眼に据えている。1学部1学科2専攻(国際社会学部、国際社会学科、国際社会専攻・地域児童教育専攻)という小規模校ではあるが、多彩なカリキュラムを準備し、履修モデルとして5つのコース(英語、国際、情報・経営、心理・人間文化、児童教育)を有している。
本学の教員養成も地域の人材を育成するという教育の目的に基づいて設置している。それは、学校教員とは、最も地域と密接なかかわりを持ちながら職務に従事する職業の一つであり、地域と共に歩み続け、未来の地域人材の育成に直接的に携わる、重要な地域人材であるという認識による。ゆえに、いつの時代にも教員に求められる資質能力としての5項目(「教育者としての使命感」「人間の成長・発達についての深い理解」「幼児・児童・生徒に対する教育的愛情」「教科等に関する専門的知識」「広く豊かな教養」)に、今後特に求められる3項目(「地球的視野に立って行動するための資質能力」「変化の時代を生きる社会人に求められる資質能力」「教員の職務から必然的に求められる資質能力」)を加え、さらに地域に根ざした教育活動をより一層充実させることをとおして、質の高さと知見の広さを兼ねそなえ、地域と共に歩むことのできる教員養成を目ざしている。
このために、本学では、実践的かつ実質的なカリキュラム、そして、地域における学びや国際舞台における学びを多層的に提供している。カリキュラムについては、学部学科全体で約350科目700超のクラスを開講しており、どの免許種を取得する学生にとっても幅広い学問領域を学ぶことができる環境を整えつつ、例えば、小1種免を取得する学生は、9教科全ての教科教育法はもちろんのこと、教科概説(教科に関する科目)についてもなるべく9教科を履修するよう指導している。
また、地域における学びについては、本学が所在する前橋市教育委員会とは2008年に「共愛学園前橋国際大学と前橋市教育委員会との連携に関する覚書」を取り交わし、それに先立つ2006年には「前橋市立笂井小学校と共愛学園前橋国際大学との地域連携協議会覚書」を、隣接市の伊勢崎市においては「共愛学園前橋国際大学と伊勢崎市教育委員会との四ツ葉学園中等教育学校をはじめとする伊勢崎市立学校の教育活動への支援に関する覚書」を交わし、本学は伊勢崎市立学校のカリキュラムパートナーに位置づいている。これらの連携関係において、教育実習の受け入れ、教職インターンシップ、学校支援ボランティア等が盛んに行われている。いくつかの特徴的な取り組みを例示すると、前橋市立笂井小学校においては、「学校フィールド学習」という授業が展開されている。この授業において、本学学生は2年次と3年次に1回1週間ずつ同小学校に通い、教職員の補助や児童の学習支援を行いながら、学校教員の職務を体得することとなる。同小学校にはよって、年間を通して本学学生が2名ずつ常駐することとなり、実質的な学校支援にもなっている。また、前橋市教育委員会と連携し「Mキッズサミット」なる取り組みも展開されている。市内の小学生が集い、市内の様々なよさや課題を発見、発信する取り組みを半年にわたって展開する取り組みであるが、本学学生がファシリテーターとして多数参加し、小学生との学びを実質化している。加えて、前橋市とも包括連携協定を結んでいることから、生活に困難を抱える中学生の学習機会を確保するための寄り添い型学習支援事業を市内複数公民館で実施しており、本学学生が多数取り組みに参加している。伊勢崎市教育委員会においては、外国籍児童が多数在籍しているという群馬県の特性を踏まえ、日本語教育拠点校への「日本語教室サポーター派遣事業」を展開しており、群馬県の教員に求められる日本語教育力や多文化理解力の涵養に寄与している。さらに、複数の学校で授業見学実習も実施している。さらに、伊勢崎市の小学生が本学に集い実施される「児童のためのグローバルワークショップ」の企画運営、同市の中学生の海外研修に同行する「海外研修サポートインターン」等の取り組みも展開されており、地域と世界を結ぶ教育の実践を体験する機会にも恵まれている。なお、両市教委とは教職員の連携も盛んであり、本学からはこれまでに前橋市教育委員会外部評価委員、前橋市社会教育委員、前橋市小中学校の適正規模に係る諮問委員会委員、前橋市立小中学校選択制検討協議会委員、前橋市立幼稚園充実検討委員会会長、前橋市教育委員会通学区域検討委員会委員、前橋市家庭教育支援連絡協議会会長、伊勢崎市教育委員会「教育改革・いせさき未来会議」委員、伊勢崎市立北小学校学校運営協議会委員、伊勢崎市立四ツ葉学園中等教育学校評議員を派遣しており、両市からは、基礎演習における教職講演会講師、初等教科概説講師、教育実習事前事後指導講師、教職実践演習講師、免許状更新講習講師等が派遣されている。
本学は、現在、文部科学省「スーパーグローバル大学等事業 経済社会の発展を牽引するグローバル人材育成支援」の採択を受けており「次世代の地域社会を牽引するグローカルリーダー」の育成に取り組んでいるところであるが、その柱の一つに「時代のグローバル人材を育成する人材の育成」を掲げており、先述の伊勢崎市教委とのワークショップや海外研修インターンはその一環である。今後は、学生が海外の学校で教育活動を展開するプログラムを構築する予定となっており、国際化する地域社会に有為な教員の育成がより充実していくこととなる。また、同じく文部科学省「地(知)の拠点整備事業」においては、教育委員会における長期インターンシップを計画しており、半年を目途とする長期にわたり教育委員会や学校現場でのインターンシップを通して、より実践力を有した教員の育成が可能となることを期待している(ちなみに、同事業の二次審査ヒアリングには前橋市教育長が同行している)。さらに、文部科学省「大学教育再生加速プログラム」においては、これら多岐にわたる教育プログラムの質保証システムが構築されることとなり、学生の学修成果の可視化と共に、カリキュラムの改善がさらに進むこととなる予定である。