教員紹介
教授
平岡 さつき
HIRAOKA Satsuki
Profile
児童教育コース教授。お茶の水女子大学大学院修士課程人文科学研究科修了。一橋大学大学院博士後期課程社会学研究科修了。修士(文学)。教育目標・評価学会理事、日本教育学会会員、日本国際教育学会会員。上田女子短期大学幼児教育学科助教授を経て、2006年4月に共愛学園前橋国際大学助教授に着任。2008年4月より現職。専門は教育史学。教育面では教職課程を担当し、小学校、中学・高等学校教員養成に取り組む。主な著書は、復刻『鑑賞文選・綴方読本』「解説」(緑陰書房)、『人間形成論の視野』(共著、大槻書店)、『到達度評価入門~子どもの思考を深める教育方法の開拓へ』(共著、昭和堂)。
学生へメッセージ
現代社会はこれまでにない転換期にあり、予測不能な課題への対応を迫られています。これらの課題のなかには、いかにAI化が進んでも人間が可能な限りの英知を結集して立ち向かわなければならないものが多く存在するでしょう。この不透明な時代に課題を見きわめ、その解決に向けて歩むためには、教育学は、福祉や医療、教育現場と手を携え、心理学や産科学、育児学、そして社会学や政治学、法学など、これまで広い意味で人間の成熟や発達の問題に関わってきた諸科学とコラボレイトする必要があります。
私のゼミでは「人間形成論の視野から教育課題を読み解く」ことに取り組んできました。
協働的課題解決力を身につけることをモットーとしています。大学の内外を問わず地域で行われる実習や学習支援、シティズンシップ等の諸活動に参加して、自らの課題に向き合いながら学びを深めています。
人がひとり立ちする上でどのような課題に直面しているのかを、現在過去未来にわたって、広く深く探ることをめざしています。誰もが経験的に関わってきた「教育」に関する一見自明なことがらを問い考えてみましょう。歴史という眼鏡をかけると現代はどう見えるでしょうか。そして「人づくり」のこれからは、どのようにみえてくるでしょうか。子どもの社会化や人間のひとり立ちのあり方を制度や教育実践、意識の位相にまでわたって探究することによって、課題の本質や解決への糸口を見いだしたいと思っています。教育学は社会における教育課題や発達課題を見すえる認識力を磨き、諸課題解決に携わるための決断と行為をつくりだす<制作の学>でありたいと考えています。
研究内容について
私の専門は教育学(pedagogy、study of education)です。歴史学をうちに含む教育学という意味で、教育史学とすることがあります。「教育」概念を歴史的社会的にとらえていこうとするもので、「社会科学としての教育学」と表現する場合もあります。
大学時代に社会思想史の研究室で学び、日本の思想史上プラグマティズムの系譜にあるとされる「生活綴方」と出会いました。これは、1910年代に姿をみせ1930年に定着した、文章を綴ることによる日本独自の人間形成の方法です。教科書がなく、自由度のたかい時間割として公教育制度に位置づいたものです。今日の総合学習のように、課題に気づいてその原因を探究し、課題解決に向けて考えたり行動したりする、その過程を文章に綴るというものです。綴方教師は自らの考えや実践を、子どもたちは自らが書いた綴方を雑誌に投稿しました。私がおもに研究対象としてきたのは教師向けの全国雑誌『綴方生活』や児童雑誌『鑑賞文選・綴方読本』です。雑誌という媒体を舞台に、教師や学者、文壇の作家などが執筆し、現代の教育課題に関わるような重要な枠組みや論点、方法が提示され、様々な教育論争が展開されています。こうした歴史の揺りかごから、現代の「生活科」や「生活指導」(のちの生徒指導)という概念や方法が生み出されました。この土壌から「教育評価」の理論や実践が生みだされてくるのです。現代に引き継がれる日本の教育遺産のひとつと考えています。
私の研究は、これからも「教育」という行為を人間形成の視野からとらえなおすことです。最近では日本における政治主体形成について考えています。
担当科目
教育と人間「教育原理Ⅰ」(中等) / 教育と社会「教育原理Ⅱ」(中等) / 道徳の理論と指導法(初等・中等) / 教育方法・技術(中等) / 基礎演習Ⅰ・Ⅱ / 課題演習Ⅰ・Ⅱ / 卒業研究 / 教職実践演習(初等) / 学校フィールド学習A・B / 介護等体験 / 教育実習・初等 / 教育実習・中等(A・B) / 教育実習事前事後指導(初等・中等)