教員紹介
学長補佐 教授
佐藤 髙司
SATO Takashi
Profile
学長補佐、地域児童教育専攻児童教育コース教授。東北大学大学院文学研究科言語科学専攻博士課程修了。博士(文学)。群馬県公立小・中学校教諭、群馬県教育委員会事務局管理主事、茨城工業高等専門学校助教授などを経て、2006年、本学准教授。2009年、同教授。2013年4月より現職。専門は社会言語学、方言学、国語教育。「ぐんま方言かるた」の制作、活用を通して、群馬方言の保存・継承に取り組む。主な著書は『新方言の動態30年の研究 群馬県方言の社会言語学的研究』(ひつじ書房)、『群馬県民の知らない上州弁の世界 「ぐんま方言かるた」の秘密』(共著、上毛新聞社)など多数。
学生へメッセージ
私の専門は方言学で、下の「研究内容について」では若者も方言を話しますと書いていますが、その方言は、若者独自のものだったり全国共通語と昔の方言とが融合した新しい方言だったりします。若者の方言を研究するのも楽しいものです。一方で、昔からその地域で話されている純粋な方言は、実はなかなか若人たちには受け継がれずに消滅の危機に瀕しているのが現実です。貴重な私たちの文化である方言が、失われつつあるのです。そこで、私たち方言研究者は昔からの方言を少しでも後世に残して伝えようと、全国各地で方言の保存継承活動を行っています。私も群馬県の方言研究者として、群馬県方言の保存継承活動を行っています。それが「ぐんま方言かるた」を用いた教育活動です。
2012年に、学生主体で「ぐんま方言かるた」を制作して販売を開始しました。群馬県方言をかるたに織り込み、群馬県の子どもたちに楽しみながら群馬県方言を知ってもらおうと考えたのです。狙いは見事大当たりして、あっという間に3000個が完売しました。2013年からはこの方言かるたを使って「ぐんま方言かるた大会」を開催しました。大会は6年連続で開催しました。この大会も学生たちが中心となって子どもたちを集め、大会を運営しました。かるたも順調に売り上げが伸び、2020年1月の段階で、10000個を売り上げようとしています。2019年からはこのかるたのパートⅡの制作を目指して、「みんなで作ろう「ぐんま方言かるたパートⅡ」コンクール」を開催しています。もちろん学生主体です。2021年には「ぐんま方言かるたパートⅡ」の完成、販売開始を目指しています。
机に向かっていることだけが研究ではありません。自らが計画し地域に入り地域の人々とともに活動することも立派な研究活動です。その中でこそ言葉(方言)を学ぶことができると考えています。学生自らが地域の人々とともに方言を学び、大切にして受け継いでいく、そんな方言研究でありたいと思い、日々活動しています。一緒に学びませんか。
研究内容について
私の専門は方言学です。方言というと田舎のお年寄りが話す言葉と思っていませんか。いえいえ、そんなことはありません。方言は、東京にも群馬にもちゃんとありますし、若者だって話しているのです。今、あなたが話している言葉だって、立派に方言なのです。「そんなことはない、私の言葉は標準語だ」と思ったかもしれません。はたしてそうでしょうか。
例えば、皆さんも一度は行ったことのあると思いますが、ハンバーガのお店 McDonald'sを皆さんは何と言いますか? もし、「マック」と言っていれば、それは立派な東日本方言です。西日本では「マクド」と言います。例えば、これから学校の授業が始まるとします。当番が号令をかけます。「起立、●●、礼、着席」。●●は何ですか? もし、「注目」なら、それは立派な群馬県方言です。例えば、小学生の頃、教室の花などに水をやったり植物の世話をしたりする当番は「水●●当番」ですか? もし「水くれ当番」なら、それもまたしても立派な群馬県方言です。ちなみに標準語だと「水やり当番」です。いかがですか。これでもあなたは自分のことばは標準語だと言えますか? このように方言には地域性があります。
また、学校で友達と話すとき、家で家族と話すとき、教科書に書いてあるような話し方はしませんね。友達に向かって、「明日はどのように過ごしますか? よかったら一緒に遊びませんか?」とか、親に向かって「ただいま戻りました。今晩の夕飯のおかずは何でしょうか?」とかと話しませんね。私たちが普段に話す言葉は改まった言葉ではなく、くだけた言い方です。これも方言と呼びます。
方言は人々の生活に密接に結び付いた言葉です。その言葉を研究することで、人々の生活、社会、歴史、ものの考え方など、様々なものが見えてきます。また、方言を研究することで、日本語のルーツが分かったり、言葉がどのように変わってきてどのように変わっていくのかが分かったりもします。方言って本当に面白いですよ。一緒に研究しませんか。
担当科目
群馬の言葉と子ども / 言葉と表現 / 初等国語科教育法 / 教育実践演習(初等) / 教育実習(初等) / 教育実習事前事後指導(初等) / 課題演習Ⅰ・Ⅱ / 卒業研究 / 基礎演習Ⅰ・Ⅱ